健康情報一覧
アーカイブス・甲田光雄講演抄録 1988~1994 No192013.03.25
< これらの内容中 社会的、医学的情報などは当時のものであることをお断りしておきます >
鈍重肝臓や慢性肝炎が増加中 1991.8.18 甲田医院で
これからは肝臓病の時代になるだろうといわれるくらい、肝臓を傷めている方が多い。
肝機能検査では異常をみとめられないのだけど、疲れ易い、肩が凝る、意欲や根気がまるでない。不吉な考えに捉われたり不眠に悩んだり、うつ傾向に陥り死にたい等と言い出す。大人ばかりではなく、若者にまで拡がってきており、実に肝臓の腫れている人が多いことが想像されます。先進文明諸国で美食飽食が可能な世の中にあって、まともな肝臓を持つ子ども達が少なくなってきておるのでしょうなあ。鈍重肝臓の蔓延が窺い知れます。その他脂肪肝やウイルス性慢性肝炎も多いです。
治療しますと脂肪肝の方は断食や食事療法で一直線に好転してくるのに反し、ウイルス性肝炎は断食をしますと患者さんご当人の自覚症状は良くなってくるけれど、血液検査での数値は逆に悪化致します。そんな訳で一般に、肝臓病に対しては断食や生菜食は禁物で高栄養、高蛋白の治療が不可欠と考えられてきました。しかしよく診て行きますとGOTやGPT数値の増悪は一種の好転反応として現れるものであって一時的な現象だと判ってきます。つまり、ウイルスに犯された古い肝細胞が壊れ、ウイルスが血液中に追出される結果、それに対抗するため酵素が増えている訳です。そう考えてみますと、完治を期待しにくい高栄養、高蛋白の治療より低栄養、低蛋白の断食や生菜食で治し切れると申せましょう。
最近、C型肝炎の特効薬としてインターフェロンが脚光を浴びています。ウイルス肝炎をひき起こすウイルスにも色々ありまして、A型は水や食べ物など経口感染で急性肝炎を発症します。B型は母子感染、輸血の際の血清肝炎など慢性化し肝硬変へ移行しやすい。
C型は実はウイルス本体は未だ特定されていないのですが、ウイルスに付着する蛋白質が外れそれへの抗体が生じますので、この抗体の有無の検査により判定されるものです。[註―現在は勿論判明している] 近年、輸血に使う血液をチェックする技術も進んで参りまして抗原HBs、HBc、HBeがないかを検査できるようになってきました。活動性肝炎という厄介な症例にみられるこれら抗原の中でも、HBeが増えてきますと非常に他へ感染させる力が強くなります。ですから、断食を行って消失させておかなければなりません。その他B型肝炎ウイルスを持つ者にだけ感染するD型、A型とよく似た経口感染のE型というのもありますが、これらは日本では殆どみられず、東南アジア諸国民に多くみられます。また最近はF型の存在も報告されています。国際交流が盛んになって多分、今後も新種のウイルスが現れることでしょう。
さてそうしたところへ、抗ウイルス剤として登場したインターフェロンは1クール200万もかかり、製薬会社もホクホク顔です。ただ副作用として発熱、関節痛が知られており、短期間の投与をくり返すのが原則です。長期間使用しますと甲状腺炎、心筋症、脱毛、その他の自己免疫疾患を誘発します。ここでT氏の例なんですが、インターフェロン療法を熱心に試みて、結局は治らず当院へお越しになりました。
ここでの食事内容といえば、青汁、玄米、豆腐それに少々の絹こし胡麻と昆布粉で一日1300カロリー動物性蛋白質もありません。あとは断食。これで結果良好になってきまして、次には生菜食へ移行。こうなれば一日900カロリーで蛋白質に到っては約25グラムでして全く常識破りの食事療法です。しかしながらT氏の血液検査の結果は全く正常値に下がり勿論自覚的にも怠さは消え忙しい毎日を送られるくらい軽くなり意欲満々で暮しておられます。これが治ったという姿です。皆さん方はインターフェロンに過大な期待をされておられるかもしれませんが、多分、労多くして実は少ないでしょう。それよりも私なら働きながら行う方法として、生ばかりの生菜食と玄米豆腐といった火食をくり返す食事療法をお勧めします。初回、生菜食一ヶ月間、火食3~4ヶ月間、二日目以降は生菜2ヶ月、火食約6ヶ月。こんな行程を5~6回くり返せばもう完治です。あっ無論のこと西式体操や裸療法、温冷浴も一貫して行って下さいね。結局、要は未解明のものを含めてウイルス全部を根絶やしにすることなど不可能に近いということです。