健康情報一覧
アーカイブス・甲田光雄講演抄録 1988~1994 No172013.01.30
<これらの内容中 社会的、医学的情報などは当時のものであることをお断りしておきます>
脳疾患と宿便 1995 甲田先生 助産婦会館で
三大成人病のうち死亡者数で二位、三位をしめる心臓病、脳疾患ですが、これらの素地として、実は宿便の存在が深く関与しているのです。現代医学では対症療法の技術向上に目を向けがちですが、根本原因の把握に盲点があります。最近注目を浴びてきました脳梗塞なんですが、しかも自分では気付かずに見逃す脳血管の細小動脈に極く小さな梗塞を起こしているという無症候性脳梗塞というのがあります。最近のMRIとかCTスキャンなど精密監査の発達により実態が明らかにされてきました。大阪住友病院の山上先生の調べによりますとこの種の梗塞は糖尿病患者の10人に8人、高血圧症の10人のうち6人に見られとのことでして案外微細なものは普通にありふれてみられる状況なのです。
それで思い出すのが昭和12年に慶応大学解剖学教室で行われた実験報告です。川上教授の下では死体の解剖が多く手掛けられていたのですが、全部で1026体を調べてみましたところ、そのうち97.7%の遺体に脳出血の瘢痕が確認されていたそうです。残り2.3%の無出血のものは10歳以下の子どもだったのです。だから10歳以上の方には100%脳出血がある訳です。にもかかわらず生前に脳出血を自覚していた人は僅か4.7%の人達だけでして正に知らぬがホトケです。それでは何故脳出血が起きたの…? 実験してみました。即ちウサギを使って腸をひもで縛って腸閉塞状態にしておいて餌を与える。するとやがてウサギは悶え苦しんで死にましたので脳を調べてみますと100%のウサギに脳出血が確認されたのです。次に先の腸閉塞ウサギの腸内に発生した分泌液を注射器で抜き取り、それを健康なウサギに接種しましたところなんと健康ウサギは死んでしまったのです。解剖するとやはり脳出血を起しておりました。これらのことから腸閉塞を起した際に腸壁辺で腐敗した分泌液が毒作用を及ぼしその結果、脳出血を誘発するという因果関係が推察されたのです。
さらにもう一つの実験。今度は腸閉塞にせず、単に便通を止めてしまったらどうなるか?ウサギは一週間、10日と排便できずにいると、やがて内容物を収容するために腸がふくらんできます。こうした状態のウサギを解剖しますと、やっぱり脳出血が始まっていたのです。 結論!便秘をすると脳に出血を来たす!・・・ということであれば、先の遺体解剖で脳出血が見られた全員が生前便秘をしていたということになりませんか。少なくとも理想的な真の排便ではなく腸管に排泄しづらいポイントがあり、内容物(宿便)を宿していたと考えられるのです。「私は毎日お通じがあるから便秘などしておりません」と考えておられる方に一石を投ずる報告ですね。
誤解されている方が多々いらっしゃるので宿便について少し申し上げておきます。宿便とは食物繊維などのような不消化物が核となって長年月腸管内に滞留しており頂度水道管の内側に付着するヌメリ気ある水垢のように想像している方が居られるのですが、そうではありません。最近の研究では従来不消化物とされてきた繊維素も腸内の嫌気性細菌により分解され栄養素として価値あるものであることが判ってきています。
嫌気性細菌の培養、実験が大変難しかったのでこれまで判らなかったのです。それにまた腸管上皮膜は3日に1回くらいで剥落していくのですからそこに何かまとまったものがコビリ付いているとは考えにくい。ですからいくら内視鏡で覗いてみても宿便らしきものがくっついているのは発見できないでしょう。
私の考えでは結局「自分の胃腸の処理能力をオーバーして食べた際に腸管内で殊に通過不全箇処で渋滞を起した内容物」ということになります。さて宿便を溜めない自分の胃腸処理能力ということですが、これを解っている方は殆んど見当たらない。たとえ解っていてもその範囲内で箸を置ける方も稀でしょう。そんな訳ですから、普通皆が宿便を溜め込んでいると思って頂いて間違いありませんしそれが当たり前の現状ですから、現代医学界でも特に問題視されておりません。しかしながら幸い今のところ自覚症状が無い脳の微出血で済んではいても、いつも腐敗内容物を腸内に溜め込んでいる状態が三年、五年、十年と続けばいかに頑健な身体であっても病気に犯されたとしても何ら不思議は無いのです。脳卒中や脳梗塞それに老人性痴呆症、アルツハイマー・・・そんな末路が待っているかもしれないのです。
痴呆症などにしましても脳内血流量が次第に減ってきた結果なのです。健全な脳なら100g当たり毎分65ccの血液が流れるのですが、たまたま血栓があり流量が50ccに減ってきたとしますと痴呆状態を呈してきます。近頃は頭髪診断で脳血流量を判定できるのですねぇ。またマグネシウムを摂ると血流がアップすることも判ってきました。
そうするとやはり玄米食ですね。ただし無闇に摂っても駄目でしてカルシウムとの比が1:2でないと・・・それなら豆腐やゴマも一緒に食べることですね。
一方、活性酸素の悪戯からβ-アミロイド線維化を促しそのため脳神経軸索が栄養不良で萎縮してくるという進行性痴呆症もあります。即ち、過酸化リン脂質を発生させますと、赤血球から酸素がうまく離れてくれないので結果として脳細胞は酸素を充分供給されずに酸欠状態にと陥っているのです。痴呆症の人はこの過酸化リン脂質が普通の方の10倍在るといわれます。そこで抗酸化作用のあるβカロチン、ビタビンC、Eなどが注目されているのです。生野菜ですな。しかしながら何を摂るかも大事ですが肝心の宿便の存在が活性酸素の増加の原因となっている点への着目が無いのは残念なことです。一般的には血流を容易にする薬などでとりあえず急場を乗り切る治療が主流となっている様ですけれど結局、宿便と脳疾患の関係に気付かないと予防も的外れ、急患も減らないでしょう。
この着眼は何も脳だけではなく心臓病、高血圧やガン、喘息、リウマチなど厄介な病気や慢性疾患に対しては皆ここに狙いを定め、この宿便を腸内に残さない少食の習慣づけをしないとやはり根治できないでしょう。