健康情報一覧
アーカイブス・甲田光雄講演抄録 1988~1994 No162012.12.08
< これらの内容中 社会的、医学的情報などは当時のものであることをお断りしておきます >
腰痛症の根本治療は 1994 8.20 甲田医院
腰痛症に悩んでいる方は、今全国で860万人といわれており、女性に多いのですが、整形科の門を叩いては、運動不足だとか、肥満食べすぎだと指摘されています。この腰痛、身体の構造からみてみますと、人類が二足歩行を始めたために背負った宿命なのですね。つまり四足歩行していた6000万年もの間、背骨の構造は家屋の梁としての構造で適応してきたのに二本足で歩くため、柱として使い始めて未だ3000万年で充分になじめず、腰椎骨に負担がかかるのです。もっともその短所の反面、人類には大脳が発達するという変化もあったのです。ですから、腰痛は赤ちゃんのように四つん這いを訓練すればラクになるのです。が反面、頭が心臓より下がる姿勢で長いこといますとオツムが悪くなります。そこで、結論から申しますと、板の上に寝て、西式の運動を行ない、少食にしておけば良いということになります。犬や猫なんか背骨を金魚運動しながら歩き、その都度脊椎骨の矯正をしていますので腰が痛いなんてことはありません。
さて腰痛の原因にも色々あります。椎間板ヘルニヤという病気は椎骨の間にある軟骨が飛び出すという変形を起こし神経圧迫を招き、痛みがきます。で、少食や断食で痛みを和らげておいて、背腹運動や金魚運動をしっかりやっていけば、出張った骨はやがて削られ、一方、削られ欠けてしまった箇所にはカルシウムが沈着して、元の形に収まってきます。骨というのは堅い固定したものと考えられがちですが、案外、吸収されて削れたり、カルシウムがくっついて膨らんだりと流動的なものなのです。その証拠に皆さん歯科で歯列矯正などなさるでしょう。針金でガッチリと固定して約一年半たつと歯根の骨が徐々に溶けたりして望み通りの歯並びが出来上がります。ということですから、変形性腰痛にしましても、板に寝て運動をみっちり一年半やれば元に戻りましょう。長年の生活上の歪みの結果として、腰が痛むのですから、短兵急に手術で削り、しぼませる薬を注射なんて危ないことをするより、反省に立って生活を正していけばよいのです。背骨も毎日適当に使っておかないとこんな破目になるのです。
次に今話題の骨粗しょう症。高齢ともなると骨にもスが入ってきて脆くなってきます。そんな方が重いものを持った瞬間ギクッと腰骨を圧迫骨折してしまいます。身長がいっぺんに3センチも縮むことだってあるでしょう。そこで皆さんカルシウムを一生懸命摂っていらっしゃる。しかし摂ったカルシウムを骨化させるということは別の問題なのです。即ちそのためにはビタミンDもカルシウムも要るし運動も日光浴も必須なのです。
さらに甲状腺機能や足脚が正常であるかどうかも関連してくるのです。単にカルシウムの充足で済むなら日本人の平均五倍もカルシウムを日常的に摂るオーストラリア人にも沢山の骨粗しょう症や腰痛症が在ることの説明がつきませんでしょう。まあ、人間を50年もやっておりますと身体の柔軟性が段々無くなってきます。腰の悪い方は尚更、脚や背も堅くなっているものです。特に足の内転、外転運動の範囲が狭くなっており、それがためにちょっとしたことに対しても踏ん張りが利かずにヨロける様になってくるのです。そこで、こうした足脚の衰えをカバーするのには合掌合蹠や毛管運動が有効です。特に毛管運動をするとき足を上げた姿勢でもって、足先を内側へ、外側へ、上側へと各々10回ずつ曲げて、足首の柔軟性を維持し、回転範囲をカバーするとよろしい。または、同じ姿勢にして、つま先で空中に「馬」の字、逆「馬」の字を左右対称に描くというのもうまい方法ですね。またトイレにしましても洋式より和式なら足でしっかり踏ん張る姿勢を採れることになります。夜休むのもベッドより畳に布団(寝板)。こうして、しっかりと足脚を鍛えれば、その上に乗る骨盤もしっかりしてきて、腰痛も肩こりも背痛も知らない身体になる。是非板に慣らして下さい。
それからまたスベリ症という脊椎骨がズレてくる病もあります。いくら元の位置へ矯正してもクセが付いていて、すぐ歪んだ位置へと戻ってしまい、中々しつこい。これは各々の脊椎骨を支えている筋肉の発達具合が、日頃の姿勢などにより、例えば左右で大きく異なっているような時にその骨を引っ張るので、ずれた形に収まってしまう訳です。ですから、整体とかカイロプラクティックなどで正しい位置に嵌め込んだとしても、えてして一時的にならざるを得ないし、ヘタして無理に矯正したら却ってその後脚のシビレ感が取れないなんて後遺症が残りかねません。やはり、縮んで硬直した周囲の筋肉も一緒にほぐしていかなあきません。ところが、ほぐすといっても一度に長時間をかけ過ぎると、その筋肉に乳酸を溜めてしまい、これまた硬く戻ってしまうのです。やはり10年も20年もかかって歪んだ筋肉ですからこれに合わせて、それなりに安定しているんです。なのに単に骨を急激に矯正しようとすると無理を招くことになります。しかも筋肉を鍛え直すにしても、背筋のみに集中するので無く腹筋、腰側筋とのバランスも要るのです。ですから無理なくやれる背腹運動が良い訳です。まあ、腰痛症の方は最初は膝立て金魚でほぐしておいてその後金魚を細かく行い、徐々にその振り幅を大きく力強い動きに持っていけばよろしい。
食事面での注意は筋肉を硬化萎縮させる肉類の過食やビタミンC不足、過剰塩分を避け、カルシウムが骨へと沈着する作用を促すマグネシウムを充分摂ること。骨密度を正常に保持できる目安として、骨塩量1立方メートル中1.20を維持できれば、骨全体にスが入ってくるようなことはありません。またビタミンDの量を減らさない為にビタミンKも減らしてはいけません。これは腸内細菌群と密接な関係があり宿便があると少なくなるのです。ここからしてもやはり断食や生菜食を行えば有利だと判ります。生野菜は筋肉を緩める作用がありますのでね。そして、治療にはヘタに即効性を求めずあくまで地道な本筋を歩むことを忘れずに。