健康情報一覧
アーカイブス・甲田光雄講演抄録 1988~1994 No132012.08.09
< これらの内容中 社会的、医学的情報などは当時のものであることをお断りしておきます >
難治・慢性疲労症候群の正体は 1995.5.6 甲田医院で
そもそもこの病気が世に知られるようになったのは、今から七年前、米国ネバダ州で原因不明の発熱で全身の倦さに襲われる症状が多発したという騒動から始まります。さては、新型のウイルス病かと米国貿易センターが調査に乗り出したのですが、どうもウイルスを特定できず原因が判然としない。結局、原因不明お病気でその症状の特徴からC.F.S(慢性疲労症候群)と名付けられたことで一般に認識されるようになったのです。
症状としては、半年間以上にわたり微熱が続き大変疲れ易く回復しない、咽が痛い、手足の関節痛、頭痛等に悩まされ続けるのです。同じ症状でも他の病気に由来することも多いので、色々検査の上認定されるようです。甲田医院へ来診されたこの病気の方々も大抵一年間くらい微熱が続いておられ、最高で十年間という人も居ります。日本でも病理研究があちらこちらで為されておりますが、まだ原因も治療法も確立されてはいません。たとえば、阪大微生物研究所のK教授などはウイルス説で細胞内の核に在るミトコンドリアの機能がウイルスのためにアセルカルニチンという酵素が減ったが故に阻害され、結果的にエネルギー産生能がダウンしていると発表されております。一方、東洋医学に造詣深いU先生はサイトカイン中のインターロイキンⅡがレベルダウンし、その結果免疫力を司るナチュラルキラー細胞の衰えがみられると指摘されておられます。そんな訳で患者さん達は、人並みに生活できない歯痒さと「なまけ病」と誤解されるイラダチで苦悩の日々を無為に過ごされて、失望感さえ漂わせることになっていきます。
ところがです。私が診ますというと、何ということはない。原因不明というが、敢えていえば「鈍重腎臓」というべき病態なのです。腎臓病というほどの悪い検査結果は出ないものの、明らかに腎機能がとても弱いです。そして決まって、その奥に潜む足脚の故障や炎症が認められます。こうした足の故障者なら、当然微熱を持ちますし、咽に炎症を発生させて風邪を引き易く中々治らないということは理解できます。こうした症状で一番影響を受けるのは腎臓でして、すなわち疲れ易い状態に陥ります。当然ながら腎機能が落ちてくると老廃物の排泄が不充分となり尿酸が溜まりがちとなり、その結果関節痛もあるだろうし、筋肉疲労も早くなるでしょう。それで患者さんの身体が慢性的に疲労状態にあるという訳です。微熱が収まりにくい、倦さやそこそこの痛みも説明がつきます。慢性疲労症候群という難治の病の正体はどうやらこの辺に在りそうです。それならば治療法にしましても「不明」ではなく腎臓病の治療に準じて行えばよいということになるのです。このカラクリが判れば、難病でも何でもありません。暗中模索の患者さん達が「ナァーんだ、そこに原因が在ったのか」と知れば精神的にどれほど軽くなるだろうと想像しますと、何とかお知らせしたい思いに駆られます。
さあ、ですから治療方針としては先ず足の故障を治すことから始めます。即ち足枠を嵌めた毛管運動や脚絆療法などに主力を注いでいくのです。もし足の故障を放置した形の治療となりますと実効が上らないでしょう。といいますのも、こうした足に炎症を持つ方達は夜就寝し、1時間半ほど経ちますと直腸温度が決まって上昇し体温が上るので寝汗をよくかくのです。そうしますと、寝汗によってビタミンCや水分をどんどん浪費する結果、知らぬ間に青あざが出来たり、朝歯磨きすると歯茎から出血などしております。また、風邪を引き易くなったり、少々根をつめることを
すれば疲れ易くなったり、微熱が中々収まらないなど様々な様相に発展しかねないのです。ですので、無自覚的に失ったビタミンCの補給をしておかなければならないと知って下さい。自分の足に故障があるか否かを知ろうと思えば、夜就寝時の体重と起床直後の体重を比較し寝ている間にどれくらい発汗で減っているかを調べたら判ります。体重に変化無ければ良い訳です。こうした身体を維持する、即ち、足の故障を治しておくのがC.F.S治療の急所といえます。勿論、腎機能を高めるのに平床に休み背骨の狂いを治し温冷浴などで皮膚機能を高めて血液循環の促進を目指すのも大切なことです。
また、朝食を食べると腎機能は落ちますので考えものでしょう。というのは、生理的に午前中は排泄が最も活発になる時間帯なのですが、朝食をとることで消化器官を働かせますと、排泄がどうしても不完全になってしまいがちです。そこで、朝食を止めて生水や柿茶を飲んで腎臓に活発に働いて貰い、体内の老廃物を処理すべきなのです。
ところが一般に「疲れ易くスタミナ切れを起こさないように栄養価あるものをバランス良く食べなさいよ」と医者に勧められるものですから、逆のことをやってしまっている。これでは治せない。どうしても栄養学の常識を打破できず、思い切った少食に踏み込めないのですねぇ。ここは一番発想を逆転し,少食にして宿便を取除くというところまでいかないと「慢性疲労症候群はやっぱり治らない病気だ」なんて難病にしてしまうことになるのですねえ。