健康情報一覧
アーカイブス・甲田光雄講演抄録 1988~1994 No92012.03.23
< これらの内容中 社会的、医学的情報などは当時のものであることをお断りしておきます >
腎臓病治療の秘訣 1990.5.12 甲田医院で
腎臓病と申しますと、まず安静にしておくことが大切とせれています。というのも、これは足脚の故障に由来する病気だからです。四足歩行動物と違い、人間は日々二本足で支え、歩き回り、踏ん張るものでして、移動建築物なのです。こうした特殊性から、足に故障を起こせば、遊びに出たくとも買い物に出たくとも我慢して安静を保たねばなりません。大阪では腎臓病で有名なS病院などですと、厳重に安静を申し渡しています。用便以外は歩かず、風呂も月一回だけという徹底ぶりです。一方、腎臓病には風邪ひきが大敵でして、折角治りかけていたのに風邪をひきますと足の故障がぶり返してきて再び悪化というケースが大変多いのです。細菌感染し、のどに溶連菌が繁殖して扁桃腺炎を起こしますと抗原抗体反応を発見し、これが腎臓細胞のメサニウムという所にくっつきまして、腎細胞を壊してしまうのです。所謂IgA腎症と呼ばれる一種のアレルギー病でこれが増えています。そして難症とされ、一生の病で腎不全から人工透析へと発展しかねません。こうした慢性腎炎に対しては副腎ホルモン剤の投与が治療の中心となっている訳です。厄介です。
ところが、断食とか生菜食を行いますと案外良くなってきます。生菜食をしていますと患者さんが歩き回っても足の故障をきたしません。断食でも好転しますが、その後の不養生から症状が再び出てくるケースもありますので、むしろ先に生菜食でずっと安定させ、その上で断食を併用してゆくと申しぶんありません。さらにそれに慣れたら、生菜食の分量を減らし、できれば一日一食にしておくとさらにスタミナがついてきます。頂度、慢性腎炎のY氏が今これを行っておられ、一日に約350カロリーです。それでなお体重が少しずつ増えて参ります。こんな低カロリーでも生活をやってゆけるのは、生菜食だからこそです、加熱した火食ならすぐに栄養失調に陥るでしょう。こうしたことからも実に生野菜の威力には驚かされますねえ。
さて今皆さんの姿勢を拝見していますと、あぐらをかいておられ胸椎10番が後ろに出張った姿勢でおられ、やはり腎臓の悪い方々だと感じさせられますねえ。あぐらでは脊柱が真直ぐにはなりません。正座をして腰骨が前方へ出てくるような姿勢でないとダメです。その為には硬い寝床に休むことが大事です。頚椎の狂いも木枕で直し、脊柱の土台である足脚の故障は足枠を使用して毛管運動を行う。こうして脊柱が整ってきましたら、あぐらより正座の方が楽なんです。一時間も二時間も平気でいられる。もし正座して脚がしびれる人は、脚がムクンでいる証拠でして朝食を抜かないといけない。特に腎臓に故障のある人は朝食を食べると腎機能が改善しません。ですから午前中は水や柿茶をしっかり飲んで排尿を促進させて腎臓を運転させるようにしますと浮腫もとれてくるのです。この辺がコツですナ。それにまた風邪をひかないように、裸療法とか温冷浴、足枠の毛管運動などに精を出すように心掛けて、基礎をしっかり固めておくことです。こうした土台の上で生菜食に入りますとあとは日にちだけの問題です。
ひとは食べ物をあれこれ食べたいと考えているうちには、腎臓病もなかなか治し切れませんし、ウロウロしている間に段々血圧が高くなってきた、蛋白が多く出てきたと悪化を招きかねません。ですからできるだけ早く「もうずっーと生菜食で結構」とハラをくくって思いきって飛込んでしまえば、それだけ治療も早く成功する訳です。腎炎といいますと、なったが最後、長くかかり、一生悪化を辿る病ですのでやはりこれくらいの気持ちは持って欲しいものです。
高血圧、腎臓のHさんなどここへ来られた時、最高血圧が278、最低でも170でして、もういつお迎えが来ても不思議ではない状況でした。そこでイチかバチかでその日からすぐに生菜食に入りました。この方の生菜食は玄米粉もなし、塩もなしで生野菜だけ。一日に400カロリーほどの食事を約一年間続けて来られました。そうしますと、みるみる蘇ってきまして、今はすっかりお元気で百姓仕事に精を出して働いておられます。このようにスッパリと気持ちを固められた人のほうが案外早く立ち直ってくるものです。生菜食の力は実にスゴイものですね。ですから、皆さん方も普段から体質改善を心掛けられて、イザというときにはいつでも生野菜や生水を飲めるようにしておくことが大切であると考えておいて下さい。