健康情報一覧
アーカイブス・甲田光雄講演抄録 1988~1994 No72012.01.23
< これらの内容中 社会的、医学的情報などは当時のものであることをお断りしておきます >
心身症克服の着眼点 1990.3.18 at 甲田医院
人は本来、自然に則った生活をいていれば、中庸を保った健康を享受できるのです。中庸の状態というのは、自律神経の交感神経と迷走神経とが各々100%働いてお互いに拮抗しており、体液PH7と中和している状態なのです。勿論、中庸の一線の前後にはある程度許容範囲があり、その範囲内でのズレは矯正しようと自然良能作用が作動して中庸を保てるようになっています。ところがこの一線を超えてしまえば、バランスが崩れ病気となってしまう訳です。
ところで以前、心身症と診断され、あちらこちらの一流の病院を巡り歩いたものの一向に改善の徴がなく当院に参られたF氏ですが、私が診るのに「この方は頭が鋭過ぎて、内臓がついてゆけずにバランスを崩されている。」と判断がつきました。社会学がご専門の大学教授さんですが、むしろ、哲学者タイプの直観力が鋭い一徹者らしく、どうもF氏を取り巻く環境の中で必要以上に無理されてこられたのが原因のようです。そこで、私はF氏に「少しバカになって下さい」と申し上げたのです。バランスを崩して心身症に陥る原因としましては、先ず対人関係など社会環境に適応できずに無理を強いられていること。次に個人的な要因として、心と体にしみついた悪い癖です。後者は食事、皮膚、足脚が考えられます。F氏の手相を拝見しますと知能線が深く一直線に月丘のほうまで伸びておりまして、真理をスパッと見抜ける彼がゴチャゴチャした対人関係に煩わされると繊細な神経が参ってしまいますので、一人でコツコツとする仕事に向いているのです。皆さんも自分の子供さんの手相をみて、ある程度の特徴を知った上で、その子の将来の進路の参考にされるとよろしいでしょうね。ほっそりとした尖った指の持主なら精神面、芸術面に向いているし、ヘラ型の指は商売人、外交の分野がいいとか、手掌の色が紅色なら短気で黄色っぽいなら取り越し苦労をして人生の暗い面をみがちだとかいったおおまかな傾向はつかめるでしょう。
次に心と身体のバランスですが、どちらに、より大きな比重のかかった心身症であるかを見極めて対処してゆかねばなりません。つまり、身体に主原因があるのに宗教とか内観など精神面の療法だけをもっていったとしても、それは少し見当外れでしょう。世間にはどうも、どちらか一方に片寄った治療をされる方が圧倒的に多いように思われます。
たとえば、S君。大学生で若いのに、ゆううつ、頭が重い、肩こり、根気がない状況が7年間も続き、どこの病院で診て貰っても原因不明で遂には自律神経失調症とのラク印を押され精神安定剤を服用し続けて、ここへ来られたのです。で、私の診たところ、右の上行結腸部に腸の癒着があり、内容物やガスの通過障害点がありました。原因はこれだと目星をつけて断食療法を進めてゆきましたら、果たしてある日突然、お腹がグルグルと鳴るや大きなオナラの轟音と共に真黒い便がドロドロ出始めたのです。S君によれば、このときを契機にあれ程執拗に悩まされた頭痛やモヤモヤ感が取れて、スッキリしたとのことでして、それ以後は快調が続いているとのことです。このように、彼の場合宗教に走っていた心身症でしたが、その原因が実は腸に在ったのです。
また、身体の癖直しと共に、勿論心の癖直しも大切です。心身症になるような方は、えてして自己中心的な考え方をする人達に多いのです。他人様の病気が治ってくると、それを素直に喜んであげるどころか妬んだりしている。そうしたマイナスの念波が結局は却って自分自身を害し、不運へと導いているのです。病気になる人には、こうしたひん曲がった性格の持ち主が多いようです。結局「病気ではなく病人」なンですナ。だから今自分が病気になっているということは天から自分に発せられた警告であると受け止めて、自分の性癖を矯正するように努力しなければならないのです。その方法とは下座(布施)の行、菩薩行です。「人生とは自分の持つ業を清めて取去ってゆく修行道の場である」と観て、5年かかっても10年かかっても努めて、やり通してゆかなければならないのです。心身症患者さんなどは特にこうしたことが必要なのです。