健康情報一覧
アーカイブス・甲田光雄講演抄録 1988~1994 No52011.11.22
< これらの内容中 社会的、医学的情報などは当時のものであることをお断りしておきます >
肝臓病治療の決め手 1989.7 甲田医院にて
21世紀は慢性肝臓病の時代だと日本医師会の元会長、故武見太郎博士が警告されました通り、現代は肝臓病が増加してきていす。今、日本で急性肝炎35万人、慢性肝炎130万人、肝硬変症38人、そして肝臓ガンが1.8万人となっておりまして、潜在的予備軍も相当数にのぼるとされております。肝炎の原因とみられるウイルスも現在、A、B、C(非A非B)型が知られておりA型は水や食物などによる経口感染、B型は輸血、夫婦関係などで感染。また母親がこのウイルスを持っていると胎児も感染して生まれてきまして成人するにつれ慢性肝炎から肝硬変症や肝臓ガンに移行してゆく確立が高くなるキャリアとなっていまします。普段血液検査を行いましても異常の出ないこうしたキャリアは300万人も居ると考えられています。C型は食べ物型と輸血感染の2タイプが確認されていますが、他にも未解明のものも推定されています。現代の医学界では逐一ウイルス解明してワクチンを開発しておりますが、これが相当困難を極めますし私はまだ新型ウイルスが次々と現れ全てに対するワクチン開発など不可能ではないかと考えております。
ところで肝臓病などといいますと、通常は高蛋白、高栄養で安静を保つといった方針で治療が行われるのですが、少食とか断食で治療するなどと申しましたら医者は目をムイて反対します。といいますのも断食でも行いますと、血液検査でGOT、GPTの数値がグンと高くなってくるからです。この数値が高くなるのは、肝細胞に潜むウイルスに対抗するためGOTとかGPTとかの酵素が出て戦う結果、壊れた肝細胞は血中に浸出してくるので数値に現れるのです。これが沢山になると大変だという訳ですナ。ところが最新の文献によりますとこの数値が高くなるということは、充来の悪い徴とみるのではなく、それだけウイルスが駆逐されていくのでむしろ良い徴とみなければならないと変わってきているんですナ。となりますと、断食をしてGOT、GPTの数値が上ったとしてもそれは生命力が高まってきてウイルスを駆逐した結果であり一過性の増悪でしてむしろ好転反応症状として喜ばしいことであると申せましょう。即ち肝臓病には断食はダメというこれまでの考え方も修正しなければなりなせん。
そこで実際に慢性肝炎や肝硬変に断食や生菜食を適用しまと、これがやはり治ってくることが判って参りました。もっともやはり患者さんの病状や体力、精神力などにより慎重に徐々に進めてゆかなければなりません。例えばN氏は活動性慢性肝炎といった厄介な病気で最初GPTが200~300もあり動くのも大儀だったのですが、大体1500kcalくらいの食事療法から初めて慣れてきたら1日のすまし汁断食,また1日、そして2日間の断食、そして今や5日間の断食をと慎重に進めてきました結果、数値もすっかり正常範囲内に落着き本人もすっかり元気を蘇らせました。以前の安静、高栄養の食事という生活から180度方向転換の生活に切換えて今や健康を取戻させました。次にF氏は肝硬変の初期でしたが生菜食にチャレンジしました。1日に生野菜1kg、玄米粉1合で900kcal、蛋白質26gという内容です。栄養学の常識からしますと蛋白質は75g~100g, 特に肝臓病なら100g以上は必要でカロリーもじっと1日中横になっている基礎体謝のみ1200kcalは必要とされていますから、これはまるで破天荒な方法と思われましょう。ところが現実にはF氏は15ヶ月目の現在すっかりお元気で健康になっておられるのです。M氏は慢性肝炎で生菜食に入りましたらGOT、GPTが600にも700にも上りましたので、これは続行が無理として一旦玄米や豆腐、野菜の副食などに戻しましたら僅か3週間で40~20と嘘のように落着いてしまいました。これは生食の反応症状としてウイルスを含んだ肝臓の細胞が多く壊れて、身体中からウイルスが排除されたことを物語っています。勿論、M氏はその後すっかりみちがえってしまいました。 このようにみてきますと、たとえB型肝炎、キャリアといえど、時間をかけて、徐々に少食、断食、生食と駆使してゆけば良いということが解ります。結局、肝臓病といえども断食や生菜食という方法が治療のキメテとなってくることを申し上げておきます。