健康情報一覧
アーカイブス・甲田光雄講演抄録 1988~1994 No42011.10.21
< これらの内容中 社会的、医学的情報などは当時のものであることをお断りしておきます >
胃腸病の治し方 1988/11/05 胃腸病克服の会 at甲田医院
胃腸病とひと口に申しましても色々でして、胃弱、胃下垂症、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃ガンなどがあり腸には大腸カタル、潰瘍性大腸炎、クローン病があります。また過敏性腸など大腸性症候群と呼ばれるものは一般に、心身症との関係に分類されます。
まず、潰瘍ですが胃潰瘍と十二指腸潰瘍。後者は胃酸過多により胸焼けが起こるのですが、前者はこれまでの見解が少し変わってきまして胃酸が少なかったり無酸状況であったりしたとき内容物が胃の中で腐敗発酵、それがために産生される乳酸、ラク酸の刺激によって胸焼けが起こると判ってきました。ですから胃潰瘍に重曹(アルカリ性)を用いるのはいけないというふうに説が変わってきました。潰瘍がある人は白米を食べると胸焼けが起こりますが、玄米食なら起こりません。ただし、玄米穀皮の繊維で痛みが来ます。そこで、玄米のクリーム食にすれば問題ありまん。そして副食は豆腐や蛋白価の高い白身魚などにしておきますと抵抗無く食べられます。この食事法は、胃下垂症や胃ガンの方にも原則有効です。 (中略)
胃腸病関係の生活上の注意点を少しご紹介します。まず食事面では煮炊き調理した野菜とか海藻類などアルカリ性が強い食品は向きません。また生野菜サラダ、甘い果物、たけのこ、キノコなど食物繊維が豊富な食品も止めるべきでしょう。当然油もの、てんぷら、揚げ物、うなぎやピーナッツは控えてください。それに過剰な白砂糖も胃腸の働きを弱めますので暑さでばてている時などでは要注意。そして、玄米ごはんですがよく噛んだとしても抵抗感がある方は結構居ますが、そうした胃腸が弱っている時には玄米粥にすると通過しやすいものです。次に調味料ですが、潰瘍には塩。醤油なら胸焼けをおこしかねないし、ましてや味噌味はいけません。第一、塩味は味覚変調の際でも食材を味わうのに障害となりませんし、胃酸産生に必要なのは塩なんです。汗かくシーズンにこういう傾向の方は多目の塩分を心掛けるといいでね。ただし水分と一緒に摂らない様に注意してください、むくみのもと。その水分の取り方にも胃腸がすぐれない人は注意を!即ち、食事中や食後3,4時間はできるだけ控えて下さい。胃袋が空っぽのタイミングに飲むように心掛けて欲しいのです。特に胃下垂症の方は守ってください。こうした人が食事の際お茶漬けとか汁物をがぶがぶやりますと、水分が余計に胃袋に溜まり腸へと下がって行き難くなる訳です。で、胃モタレや膨満感で苦しむこととなります。野生動物の多くはこんな食べ方しませんからね。人間だけですワ。
2番目には背骨の狂いを直す手立てをしておかないといつまでも胃腸病は治せません。特に胸椎5,6,7番の狂いが大切。ここは幽門部括約筋の動きを統御していまして、開閉運動が弱くなったり、回数が減ったりとなります。こうなるといつも胃袋が不快で、膨らみっぱなしの重みで下がってきます。内臓下垂の人はそれを支える腹筋を鍛えるスットン体操もやって下さい。背骨矯正には金魚運動や背腹運動が有効です。そして硬い寝床の平床で仰向けに休むことです。
さらに考えなければならないことは腸管内の宿便停滞です。これが取れさえすれば腸管に真空が出来ます。真空があるとなれば自然はそこを埋めようと作用しますので、上の小腸や胃の中の内容物を引っ張りにかかりましてその結果胃モタレ現象など解消します。皆さん、この「真空を作る」という観点は健康法を考える上で非常に大事なポイントなのです。たとえば毛管運動。心臓より高くに手足を上げて微振動しますと手足の抹消血管の中に真空を生じるのです。ですから今度手足を下ろしたときにはそれを埋めるべく血液がドッと流れ込んできて、その結果血液循環が良好になるのです。また同じ理屈で、心に満たされない真空地帯がありますと渇望感が作用し、遂にそれが満たされた時の幸福感は他人には分からないくらいの大きさとして認識され、精神面の健康を後押しするわけです。そうした原理からすると、現代医学では胃腸病に対し分食を指導し一日に5回も6回も食事させますが、これでは消化管に真空が出来ないためいつまで経っても治ってこないことになりませんか?そうじゃなくて、腹八分にして真空を作ってやるのです。
腹八分の少食といいましても、胃腸能力の弱い人の分量は当然胃腸が強い人の分量より少なくしないといけません。かなり少食とならざるを得ません。そうしないと衰えた機能は回復してきません。そこへ以て、大概胃に荒れを持っていますので、実際に少食を始めますと、人一倍空腹感が強く起こってくるのです。偽腹といいます。しかも体重減少は短時日で激しいものがあります。そうなってきますと、周囲の人たちが心配し始めます。「もっと食べないとダメ!」そう聞かされると本人も不安に思えてきて決心が鈍ります。「甲田先生の治療法についてこちらの先生に相談してみようか」ということになります。さあどちらの先生が賛成しますかねえ?「そんな方法は直ぐに止めなさい」というのがオチでしょうなあ。けれどやっぱりこのハードルを越えて行かンと治せンのです!
また一方、潰瘍性大腸炎、過敏腸症候群のような腸の病気の方は胃の病気とは違ってスイマグなど下剤は使いません。使うにせよ1升の水に1キャップ(10cc)くらいに極々薄めて少量ずつ1日かけて飲むのがコツです。食事では特に腸の中で腐敗しやすい動物性食品は避けておきます。蛋白源は豆腐のみとし、その分主食の玄米を多い目にして昼夜2食で、時には玄米クリーム食に替えたりして進めます。あとは野菜ジュースとかゴマペーストなどのシンプルな内容で治るまでズウッと一筋に続けたらいいのです。難病といわれる病もきれいに治っていきます。