健康情報一覧
アーカイブス・甲田光雄講演抄録 1988~1994 No22011.09.01
< これらの内容中 社会的、医学的情報などは当時のものであることをお断りしておきます >
すこやかに老いる健康法 後編 「1988/3/13 人間医学社主催講演会で」
それからまた、最近話題に上る病気に骨粗しょう症というのがあります。骨が脆くなってポキンと簡単に骨折したり、脊椎の変形圧迫から関節痛、腰椎変形や痺れ感が起こってきます。原因はカルシウムが抜けていった骨が多孔質にボロボロになってくるというものです。それなら、カルシウムをどしどし補給すればいいじゃないかと考えられがちですが、そう単純ではないみたいです。それといいますのは世界有数の酪農国オーストラリアはチーズあり、バターあり、牛乳を毎日1L飲むなどで岳約1gのカルシウムをふんだんに摂っているお国柄なんですが、調べたところ50歳以上の約半数が骨粗しょう症や予備軍らしいです。この研究で有名なテキサス総合大学のビアンパル教授が興味ある実験を発表されています。ラットによる実験ですが2グループに分け、片方の群れには腹十分に餌を与えて飼育、もう一方にはその6割の餌で飼育して生理を比較したものです。それによりますと、腹いっぱいのネズミ群は6割の群より早くに老化の進行が現れ、寿命は短くてしかもがん細胞など色んな病変部が見られるのだそうです。そして体内には副甲状腺ホルモンが増えてきたとのことです。一方の腹ペコネズミたちは寿命の最期まで活動的で副甲状腺ホルモンがそれほど増えず有病率も低かったのです。副甲状腺ホルモンといえば、骨中のカルシウムを血液中に引っ張り出すのに関与し、甲状腺ホルモンは逆に血中カルシウムを骨に沈着させる働きをするわけです。ここから解るのは腹一杯に食べる習慣が中高年期に骨を脆くするということで、人間でも多分同じ結果だと想像できます。だから中高年齢で骨粗しょう症になりたくなければ少食を習慣にして活動的な生活をしないといけないことになります。ところが皆さんはやれぶらさがり健康だ、やれ整体矯正だなどと見当違いの対策に熱心です。それより私は西式健康法の金魚運動や背腹運動をお勧めしますナ。腰痛や肩こりなんか20分毎日やっていればよろしいのです。骨にしろ筋肉にしろ自分で運動して毎日使うようにしないと老化して痩せてきますものネ。痛いからといって安静にしていれば却って治らないもンです。そしてまたビアン氏の実験から解ったことは、食事内容で蛋白質があまり多くなるとどうやら寿命が縮まるようなのです。実験で使った内容分析では蛋白質が21%と比較的多い目の構成比となっていまして、でんぷん質が43%、脂質は10%(以下省略)これと同じ構成比で40%減らした量にすると寿命の延長が17%ほど確認されたとのこと。それに蛋白質の中味を動物性から植物性に替えると検査結果が良好に変化したらしいです。同じ条件がヒトにもあてはまるとはいえないかもしれませんが、やはり皆さん、肉や卵、牛乳バターより豆蛋白食品を中心にして少量の魚、チリメンジャコなどであったらもう十分だと認識を新たにして、しかも腹6分で死ぬまで健やかに老いて行って下さい。
さてこれで皆さん、少食の大切さをお分かりになったでしょう。じゃあ、いざ実行!しかし実はこれほど辛い事はないンです。余計に色んなものを食べたくなるのが人情ですナ。頭で解ったとしても身体がそれを許さないンです。ここが我々「凡夫」たる所以ですねえ!問題解決の方程式を解ったとしてもそれを自在に応用できなければ結局解決にはなりません。ですから「病気が治る」というのと「病気を治せる」というのは別なンです…でもやらないと…。この点には大きな壁があるのです。それは私たちの心の中に本当の意味で「食べ物に対しての感謝」の気持がまだ湧いて来ないうちはやれないのです。「今日の肉は特価で安い」とか「美味しいお米は魚沼産でなくちゃ」とか「有名シェフのあれを食べたい」とか食べものをモノやカネで理解しているンですナ。そうじゃなくて、食べものにも元は命があって我々人間と同じくこの星で生命活動を営んでいたのです。そしてそのいのちを犠牲にして我々がいのちを永らえているのだという「感謝の念」が頭の中だけでなく身に沁みて判ってはいないのでしょう。
そこでひとつ提案なンですが皆さん、食べものを前にしたらまずそれを神棚、仏壇にお供えしたらどうでしょう。一拍置いてから頂くのです。そして毎晩9時になれば過食して病気になっている世間の人の業(ごう)を清めるためのお祈りをさせて頂くのはどうでしょう。他人に対してお祈りする立場に立てばどうしてつまみ食いなぞできるでしょうか。例えばの話ですけどこうした習慣を身に付けてこそ少食を我がものとすることができるンです。こう考えてきますと21世紀からの医学というのは科学的見地からだけでなく、こころ、宗教といった面が必要になってくるように思います。「宗医一体」の姿に進化していくと思います。現在の医学の立場から健康に老いるには少食が良いと言う事はできるとしても、実行の継続となるとまだ提言がありません。学者というものは動物実験だからこそ腹6分の食事量を続けるのがいいと言いますが、少食の辛さ、困難を感じてはいないのでそう言うのです。これ人間だったらどうなります?たとえば監獄に入れられ腹6分の食事を何年も続けていたら、それこそ出所したら真っ先に食堂へ直行して腹200%にしますねえ。(笑)イヤホント。固い意志の持ち主がどれだけいます? だからこれから21世紀には医学は宗教と連携一体化して治療に当たらないと成果を上げられません。 (了)