健康情報一覧
アーカイブス・甲田光雄講演抄録 1988~1994 No12011.08.11
< これらの内容中 社会的、医学的情報などは当時のものであることをお断りしておきます >
すこやかに老いる健康法 前編 「1988/3/13 人間医学社主催講演会で」
日本もこれから老人大国の仲間入りをするようです。でもその内容を細かく見ていくと必ずしも長寿国になったと喜んでばかりはいられません。というのは、老後の状況なんです。長々と患い病院で検査や注射で日々明け暮れたり、畳の上で息を引き取りたい希望とは裏腹に入院生活を余儀なくされたり、という方が増加するとの予想だからです。また一方、在宅介護老人ではあるものの、寝たきり、恍惚老人としてオムツをあてがわれたり、家族から疎まれたりの悲しい状態が待っているとの予想がされているのです。家族の人だって大変ですよ。「夜中に外に出て徘徊するワ、今食事したばかりなのに食べていないと騒ぎ出すワ、ガスの火を消し忘れるワ、もう限界!いや!」なんて。こうなったら何の生き甲斐ある人生でしょうかねえ。やはり、ちゃんと自分の頭で判断でき、健康で行きたいところへ行き、周りからは喜ばれ、惜しまれて成仏する、そんな老後でありたいものです。
また医療費の膨張がこれまた問題です。今、日本の人口の11%、1300万人が65歳以上の老人なンです。この年齢層に要する医療費が(昭和)59年度実績ですが総額の34%にも上ります。そして今後老齢人口の割合が年を追って増え、2000年度では15.6%、2020年には23.8%に達すると予想されているのです。それに伴って医療費は確実に膨らんでいきます。現在(1988年)でも19兆円がつぎ込まれていて将来健康保険料も膨張せざるを得ず、パンクしますよ。保険料を納める側の人はタマッタもんじゃない。厚生省にも今のところ妙案が無い。どうします?こんな世の中がもうすぐ21世紀には待っているんですよ!だから老人としても医療費をアテに出来ないもんだから死ぬまでできるだけ病気にならない心構えが必要になってきます。昨日元気で今日大往生といった風にね。
そこで本日はそんな健やかに老いる秘訣ということをお話させて頂きます。で、結論から申しますと「少食健康法」ということですね。昔から「腹八分に医者要らず」と申します。私が思いますには「腹六分に病知らず」さらに「腹4分に老い知らず」でここまで来ますと寝たきり老人とは無縁の生涯。でもまあ私たち凡人としてなかなかそうは参りませんので、当面は「腹六分」にして病むことなしに老いるというところに目標を定めて頂きたいと思います。
さて次は病人の現状です。今1年間に亡くなられる方が約75万人。死亡原因別に見ますとガン19万人、心臓病14万人、脳疾患13万人以下肺炎と続きますがこれら上位三つだけで計46万人にのぼり、実に62%に相当します。その他多いのは肝臓病、糖尿病などの成人病(生活習慣病)が並びます。文明病といわれるアレルギー症も多いです。ちょうどこれから花見のシーズンですが花粉症の人なんかは多分マスクをしてお出掛けになるんでしょう。文明人も情けないですナ。これら成人病になる素因として飽食は勿論ですが、実はバイパス血管グローミュー(動静脈吻合肢またはAVA)の不完全さが潜んでいるのです。たとえば心臓病。冠状動脈が詰まって血の流れが細くなってくるのですが、もし血栓で塞がれて心筋組織に栄養が行き渡らなくなったら一大事。現代医学では緊急手術でバイパスを作ることもします。でもね考えてみてください。事ここまでなった人なら患部が一箇所とは限りません。じゃ他のところも2ヵ月後にバイパス形成術ですか?次々と見つかるたびに手術ですか?まるで水道管の修理工みたいですナ。いっそ体力あるうちに心筋のあちこちに予防的にバイパスをこさえて置いたら良いじゃないですかねえ。さて皆さん、外科的方法以外でバイパスを作れるとしたらそれで良いとは思いませんか?あります。西式の毛管運動、裸療法、温冷浴、生野菜に柿茶、これらを一生懸命やれば出来てくるのです。狭心症や心筋梗塞だと判ったらこれらを良い生活習慣にすればいいのです。ましかし、普段から予防的に健康法として実行するのが本筋ですので、グローミューを健全に維持しておくことが望ましいわけです。
また、脳卒中も同じです。昭和36年の日本医師会雑誌に載った長谷川恒夫先生の論文によりますと脳卒中を起こす人は大概グローミューが消失してしまっているとのことです。元々グローミューは脳の灰白質には比較的多く分布していて一方視床下部には少ないとされています。そしてやはり視床下部は脳出血の好発部位となっている訳です。普段から血圧が高い人は要注意なんです。こんな人は医師から減塩の注意を受けているはずです。まもっとも、最近の研究では減塩より減食によって血圧低下が得られるとの報告もあります。どうやらポイントはここじゃないかと考えます。近年、子どものうちから将来高血圧になるということが「寒冷昇圧テスト」で予想できるようになって来ましたので、こうした該当者はやはり若いうちから少食を習慣づけ、グローミューを壊さないように予防して欲しいものです。
ところが現実は逆にグローミューを破壊することばかりやっております。甘いもの、アルコール、大食、グルメなどが習慣づいていてそれらを無上の楽しみと言う人がなんと多いことか。「1kg数十万する肉を食べた」「一押しラーメンが5000円」「酒は灘の生一本に限る」「ここがカステラの老舗だわ」と話題に事欠きません。またお店も「うちのジャンボラーメンを10分以内に食べたら無料にします」と煽り立てる風潮。これではグローミューも堪ったもんじゃない、将来の病気が心配ですワ。
それに加え医療検査の発達が目覚しく、ガンの早期発見が大きく可能となってきました。あなたもわたしもと一般的な病気になったのです。それにつれ早期摘除を薦められ「ぼくは胃を取った、君は膀胱か」「わたしは左の乳房、心配だから右も取ろうかしら」「そうか俺も右肺取った方がいいかも」まあこんな調子ですかな。だからやっぱり予防に勝る治療なしで、日頃から生菜食でもして先手必勝が賢い。大食の繰り返しで挙句の果て、ガンになったからといって泥縄式に生菜食だ、裸療法だというのはマズイ。少食の習慣を常々身につけて置くことです。